生物統計学において反復が意味すること

『 反復 』は統計学にとってデータの信頼性と再現性を担保するために不可欠な概念である.しかし,統計学の多くの書籍をあたっても『 反復 』の明確な定義は記載されていない.『 反復 』とは,① 複数のサンプルを使用すること,② 同じ実験を複数回繰り返すこと をともに意味している.

反復(repetition)とは何を意味するのか?

反復とは,分析・観察などの実験において,同じ条件で複数回データをとることを意味している.注意すべきことは,反復という専門用語は,① 複数のサンプルを使っていること,② 同じ実験を繰り返し行っていること をともに意味しているということである.この ① および ② をともに意味していることは混乱を招く原因になっている.

実験例 生育のそろったトマトを 10 個体を用い,対照,除草剤処理,殺虫剤処理,殺菌剤処理を設け,乱塊法により反復を 3 回として 120 日間栽培した.トマト 1 個体から5個 の果実をサンプリングしてそれぞれフルクトース含量を測定した.

上述の実験で『 反復 』にあたるのは,(1) 対照および各処理の 10 個体のトマト,(2) 乱塊法により反復を 3 回,(3) トマト 1 個体から5個 の果実をサンプリング 以上の3つの項目である.反復といったときにいずれの項目もそれに該当するので,あいまいさ を 生じさせること になる.

反復という用語は 同じ実験を繰り返した場合 にだけに使用したほうがよい

これまで説明してきたように,反復は ① 複数のデータ および ② 同じ実験を繰り返し行っていること を意味するので,同じ実験を繰り返した場合にだけ 反復 という用語を使用することがよいと考える.このブログでもこの記載方法をとっていくことにする.複数のサンプルを使用していることは,サンプル数を 10 個体とした とか サンプルとして 5 個の果実を使用した などど用語と数値で示すことをおすすめする.

企業の新規事業部で研究開発の仕事をしていたときの同僚は「 培養細胞のフラスコ を 3 連にして実験をおこなった」といっていたことを思い出す.培養細胞なのでフラスコを振とう培養機に 3 個ならべている状態になる.3 連は可視化しやすい表現だな と感心した記憶がありる.サンプル数と反復という専門用語に使い方には注意が必要あるが,この元同僚のことばのように 慣習的につかっている用語にはおもしろさがあると感じる.専門用語を羅列するとプロのようには見えるが,説明としてはわかりにくくなるので注意が必要である.

まとめ

(1) 反復は ① 複数のサンプルを使っていること,② 同じ実験を繰り返し行っていること をともに含む用語である.

(2) 反復は同じ実験を繰り返した場合にだけ使用したすることを勧める.