有意性検定と統計的仮説検定

統計的仮説検定

統計的仮説検定とは,標本のデータを調べ,そして期待されるデータの分布と比べることによってこの期待される分布をもたらすべき仮説を受け入れるか,あるいはその仮説を棄却して,他の仮説を受け入れるかを決定することである(1)

有意性検定とは,P 値は正しいと想定したモデル と 観察されたデータの乖離の程度 を 示す指標(2)として解釈 する検定を示す.つまり,統計的仮説検定は P 値によって仮説を受け入れるかどうか までを含んでおり,有意性検定は 仮説の希釈あるいは保留を含んではいない検定である.

しかし,多くの検定において,有意性検定と統計的仮説検定を混ぜたものである(3).筆者が経験した 植物生理学,園芸学,植物育種学,植物分子生物学のおいては,P 値を示す検定は ほぼ,統計的仮説検定であった.

(1) 坂巻顕太郎 2023 年 第 8 回 検定と P 値 生物統計学の道標 厚生労働統計協会 P 76

(2) 坂巻顕太郎 2023 年 第 8 回 検定と P 値 生物統計学の道標 厚生労働統計協会 P 74

(3) 坂巻顕太郎 2023 年 第 8 回 検定と P 値 生物統計学の道標 厚生労働統計協会 P 69

生物統計学で有意性検定とは ほぼ 統計的仮説検定のことと考えてよい

生物統計学は実用性を必要とされるので,数値による『 効果あり 』,『 効果なし 』が求められる.したがって,P 値による 統計的仮説検定を認めざるを得ないことになる.しかし,P 値による統計的仮説検定だけで効果を判断するのではなく,他のエビデンスや 95%信頼区間を示すこと(4)が必須であるという提案に賛同する.筆者もふくめてこれまでの生物統計学は P 値を閾値として絶対的なものとする考えが強すぎたのである.

(4) 坂巻顕太郎 2023 年 第 8 回 検定と P 値 生物統計学の道標 厚生労働統計協会 P 68

まとめ

(1) 実社会においては,数値による『 効果あり 』,『 効果なし 』が求められる.したがって,P 値による 統計的仮説検定を認めざるを得ない.

(2) これからは,P 値による統計的仮説検定だけで効果を判断するのではなく,他のエビデンスや 95%信頼区間を示すことが必要である.