2 群の比較の検定

スチューデントの t 検定,ウェルチの t 検定,マン・ホイットニの U 検定

対照と処理に統計的に有意な差があるかどうかを検定する方法としては,スチューデントの t 検定(二標本 t 検定),ウェルチの t 検定,マン・ホイットニの U 検定がある.スチューデントの t 検定については,同じ検体を使っている場合(はじめに計測をし,その後に処理をし再度,同じ検体を計測するなど)対応のある t 検定(一標本 t 検定)を利用する(1).

(1) 清水信博 2004 年 もう悩まない!論文が書ける統計 オーエムエス社 p.56

スチューデントの t 検定(二標本 t 検定),ウェルチの t 検定,マン・ホイットニの U 検定を使用する際に集団あるいは集団間について,正規分布,等分散および帰無仮説を下に示した.

この表に従うと,たとえば,スチューデントの t 検定を利用できるかとうかは,正規分布の確認および等分散の検定をしてからになる.この行為は同じデータに検定を繰り返すという多重性の問題を生じさせることになる.この問題の対処法としては,① スチューデントの t 検定は頑健性が高い(データの分布に対しての頑健性が高い)ので,正規分布および等分散の検定をすることなくスチューデントの t 検定を利用する,② 正規分布性や等分散性を問題にしなくてよいマン・ホイットニの U 検定を利用する が提案されている.

いずれの対処法を利用するかは,統計解析を評価する立場の方によって判断する必要がある.統計学にとても真摯な方ならば,マン・ホイットニの U 検定を選択することになる.

農学・植物科学において統計解析をする場合,サンプルサイズは実験の労力や研究費の縛りから 30 以下になる場合が多い.このため,マン・ホイットニの U 検定を使ったほうが問題が起きにくいと考えてよい.しかし,スチューデントの t 検定よりもマン・ホイットニの U 検定は知名度が低いので,高い頑健性が高いスチューデントの t 検定を選択する場合もある.

まとめ

(1) 2 つの集団(対照および処理)が同じであるかどうかの検定としては,スチューデントの t 検定がよく知られている.                            (2) スチューデントの t 検定は,② データが正規分布していること,② 2 つの集団が等分散をしていること の 2 つの条件がそろっている必要がある.            (3) 正規分布性および等分散性を検定すると,多重性の問題が生じるので,統計学的に正しいのは,マン・ホイットニの U 検定を使用することである.            (4) 慣習的には,頑健性の高いスチューデントの t 検定を使うことが多い.      (5) いずれの検定を使うかは,統計解析を評価する第 3 者によって適切な判断が必要である.